Won't you have a cup of tea? 1/10
 まだ春浅い。春風が吹く中、柳瀬 瑞貴は行きつけの喫茶店に座っていた。
 瑞貴は、今やレギュラー週四本持っているアイドル声優の一人で、CD、や写真集を出すほどの人気者だ。そして、今度子供向けテレビ番組のメイン司会者の一人に抜擢されても居た。
 この二ヶ月ほど、休みらしい休みもなく、今度のその子供向け番組のために、今日は、完全オフ日で、街で買い物をするために出てきたのが、このところの忙しさや、少し疑問になり始めてことなどが気重になって、結局いつもの喫茶店に落ち着いていたのだった。
 瑞貴が頬杖を付いていると、瑞貴の隣のガラスを叩く音がする。見れば、高校の時の同級生で、忙しくなかったほんの少し前までよく遊んでいた、須田 春奈がいた。春奈は満面の笑みを湛えて店内に入り、瑞貴の前の席に座った。
「忙しい?」
 春奈は久し振りと挨拶をしてから切り出した。
「まぁね。」
「今日は休みなんだ。」
 瑞貴は頷くと、春奈が注文したコーヒーが運ばれてきた。
「で、何してんの?」
「何って、このところ忙しくって、どっか行きたいなってとこはあっても、いざ休みとなると、なんか行きにくくって。」
「解るなぁ。そういうもんだよね。」
「春奈は、今日は?」
「あたし? 日曜の代休。月末日曜で、無理して仕事したら、休みくれたの。」
「そっかぁ。」
 春奈は女優になるのが夢だった。その夢を諦めて、まぁ、そもそも、女優になると言う夢がどれほど真剣だったかは知らないが、それでも、夢が叶っている瑞貴を羨ましがっているには違いなかった。
「何よ、暗い顔。」
「なんかね。訳、わかんなくて。」
「売れっ子なのに?」

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