楡崎 瞬さんへ | |
「手酌酒」 | 雨が降る 蛇の目傘の水をはじく音 足早に過ぎる足音 お燗の中の酒は微々たる量を残すばかり、振っても、大した音にも成らない。 諦めて家に帰るか。 袖に終った両腕。勘定を机に放り、楊枝をさして店先に出る。 店先で雨宿りをしている少女。 ついと持っていた傘を差し出す。 「持っていきな。使いの帰りだろ? 旦那さんに叱られちまう。」 少女は頷いて、傘を受け取り、何度となく振り返り頭を下げては立ち去った。 正直、この雨の中、傘もささずにゃぁ帰れねぇ。 「しかたない。」 もう一度店に帰ると、親父が無愛想に酒を出してくれた。 手酌を一献すると、 「旦那、粋だね。」 と親父が呟いた。 「ああ、粋ってなぁいい気分だ。」 重ねる酌もいい案配だ。 |
これを書いていると、吉幾三の歌を思いだした。 「手酌酒ぇ 一人酒ぇ 演歌を聴きながらぁ 」 って、演歌が好きなあたし(うふ) |
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