ミス・クリスティーの憂鬱

栗栖 愛梨くりす あいりが何とか新しい学校にもなれた頃、やはり最初に言われた[開かずの間]が気になっていた。
 初歩的な心理学だが、[怖い]とか「駄目だ」と言われるとそれに対する好奇心というものが、異様な大きさに膨れ上がり、心の大部分を占め付けるものだ。だからと言って愛梨はそれを行動には移さない。比較的遠くからその場所を観察する日々を送っていた。
 愛梨には、最初に助けた形になった成宮 愛加を始め、笹山 あすみと言う仲間を得て、一人でいることは少ないが、彼女たちの話題には、愛梨が参加している様子はない。
 ただ寡黙に、彼女たちの会話場所である廊下の桟に肘をつき、[開かずの間]を見下ろしている。
「あれ? 」
 愛梨が変な声を出したので、二人が窓の外を見た。
 下では、校長が三人の作業着を着た男たちと話をしている。
「解体するのかしら? 」
 「呪われるわよぅ。」愛加の言葉にあすみは怖そうな声を業と、愛加の耳元でかける。愛加が顔をしかめてあすみを軽く突く。
 愛梨がその様子を見ながらふと別の視線を感じる。中校舎の二階、視聴覚室準備室のカーテンの隙間の白い物体。それが顔で、目で、前髪だと解る方が、視力がいいのか、それをよく見ている所為か、愛梨以外気付いたものは無かった。
「どこに行くの? え? トイレ? 」
 あすみに声をかけられながら、愛梨は中校舎のほうへと降りていく。階段は南校舎、渡り廊下突き当りと、渡り廊下直ぐにある。階段ばかりの学校だが、それも、学校の開放的空間とやらを意識して作ったらしい。
 愛梨が二階に下りると、都合がいい様に成宮 惣二が居た。
「何してんだよ。」
「上のトイレが一杯でね。降りて来たの。」
 そう言って窓に近寄る。もう既にかすかな隙間の白い物体は姿を消し、まだ、業者と校長は会話をしている。

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