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「あのさ、今度、コンサート行かないか? 」
「コンサート? 」
 愛梨が横を見ると、[エイジ]のコンサートチケットを差し出した。愛梨は何も言わずに窓を見ると、ふと視界を落下する銀の物体。愛梨は直ぐに上を見た。だが、出発点になるべき所は誰の手が長くとも、いくら放り投げたとしても、空中であるのだ。
 落下したものは、校長と業者の間に真っ直ぐに地面に突き刺さった。古い錆びたはさみがその錆付いた刃を開いて片足を地面に入れたまま突き立っていた。
 校長がけたたましい大声を上げているが、誰がしたわけでもないのは明白だ。ただ、窓から顔を出していた、学校きっての悪がきである惣二が校長の目に止まった。
 俺じゃない。と言っても、生徒指導やら、あらゆる教師の答えは惣二のしたことに決まりかけたとき、愛梨が口を出した。
「実験してみたら? 惣二がした証拠になるのか、惣二が無実か解るわよ。」
 愛梨はそう言ってはさみを掴み取り、惣二と居た二階の渡り廊下の窓まで来た。
「二人でここで見てたから、ここから投げるとする。ほら、投げて、すると、単純に考えても、こちらに背中を向けていた校長の頭に当たるか、運良く当たらずとも、ああして地面には斜めに突き刺さるわ。でも、挟みは垂直に突き刺してあった。つまり、ここからではなかった。どう投げ様とも、惣二の腕力と、頭脳の無さから行くと、そう言う投げ方しか出来ないはずよ。たとえ、私が別の投げ方をしても、ほら、やはり傾いて突き刺さるわ。以上の点から、惣二が投げたと言うのは、理論的に不可能よ。ただ、投げた後で降りて来た。などと言う小細工、もしくは仕掛けをしてアリバイを作ったと言うのなら、惣二でも出来なくないけど、そんなことをする奴だと思う? 頭を使うことを嫌う奴が計画を立てることは、まず考えなくていいわよ。」
 愛梨がそう言うと、小林もその意見に同意し、更に科学の教師らしいもっともな科学的根拠で説明した挙句、空中のど真ん中あたりを通らなければならないという意見まで出して、茜空を指差した。
 屋上へは出入りが禁止されている。鍵は錆付き、その鍵ですらもうないと言う。屋上の出入りが不可能な今、どこから来たはさみかが疑問の種になった。

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