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「いや、アイリーンは僕とチェスの最中なんだよ。」
「二人が誘ってくれるのはありがたいけど、私はどちらも。」
 アイリーンが困ってそう返事をするが、二人はお構い無しに次の遊びを提案してくる。
 アレックスとジョンはアイリーンが気になっていた。年の頃は丁度十五で、二人の思春期の男子には、格好の女の子だったが、生憎アイリーンには想いを寄せている人が居るということを知って、二人は些か不満を感じながらも、それでも口説いていた。
 子供たちのことについて書くとすれば、アレックスはニューヨークの大学に通っていて、今は帰ってきている。ジョンは高校でアメフトをしている所為か、肩がいかり型だ。シルビアは歳の割に大人っぽくて、おしゃれが好きなようで、最新の服を着たがる。別に兄妹の中が悪いわけでもないし、勉強もそこそこ出来ているので、子供にも問題は無いようだ。  フォード氏はこの辺りで有名な事業化で、親の代から続いているらしい。酒も煙草のするが悪癖とまで行かない程度で、悪い癖ではない。ギャンブルをするわけでもない。女に興味があるわけでもないのだ。
 最後に残ったのは、婦人のヘレンだが、ヘレンもまた別段変わった所が無い。買い物が好きではあるが、依存症ではないし、酒はたしなむ程度で、夫以上に貞節のしっかりした夫人だ。
 この三人の珍客は、フォード氏自ら招待した客で、奇妙な客の共通点は、フォード氏の趣味であるミステリーサークルだった。インターネットで知り合ったこの三人―ジュリーと知り合ったというよりは、最初はアイリーンと知り合った―と逢おうと言う話しになって、この日を迎えたのだ。
 昼間は、フォード氏とレストレード君とジュリーさんは桟橋に出掛け釣りをしに行っている。アイリーンとシルビアは歳も近い所為か、直ぐに仲良くなり、おしゃれだの、恋愛だのの話しに夢中になっていた。
 青翼の家の周りは白樺が植えられていてちょっとした並木道ができている。林はその土地特有の木ばかりだから、その白樺の白さが以上に目立つ。
 一度屋敷に足を入れると、その古い模様の赤い壁紙が圧迫感を与えてくる。螺旋の階段は金メッキを施してあり、それが新しすぎて違和感を与える。
 初日の晩、夕食後、全員で大広間に集まってくつろいでいた。そこへフォード氏の言葉が切り出された。

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