紅玉の偽り

 学校にも慣れ、水泳が始まると、栗栖 愛梨くりす あいりの運動能力が更に有名になる。水泳の選手といい勝負が出来るほどの記録を出したが、愛梨は水泳部に入ることを拒んで、勧誘にきている水泳部の部長を煩がっていた。
 初夏というよりは、まだ梅雨の残りのような雨がぱらついている。
 笹山 あすみが写真を手に教室に駆け込んできた。あすみは報道部の部長で、カメラ小僧―小娘?―だ。愛梨はその部に在籍している。息を切らして、顔を赤くしている。あすみはその写真を愛梨の机に叩き付けるようにして置いた。
「大スクープよ。」
 写真には小林と田畑が並んで映っていた。それだけではたいした写真ではないが、二人が腕を組んで歩いているのだ。
 小林は、前にも言ったが学校一胡散臭い格好をしていながら、学校一モテる化学の教師で、田畑は愛梨たちの担任で数学の教師だ。
「いいんじゃないの、適齢期の男女が一緒に働いてりゃそういうことがあってもさ。」
 愛梨の言葉にあすみは眉をひそめる。たしかに愛梨が飛びつくような話で無いと思っていた。でも、少しは興味をそそるかと思ったが、愛梨にはそう言うもの「恋愛」とか言うものに興味が一切ない、皆無な様だ。
 あすみがため息をついて成宮 愛加に見せる。愛加は愛梨と同じクラスで、前に座っている。朗らかで明るい子だ。
「これってどこ? 」
「今やってるでしょう? ロイトーグ王国の国宝展。あれ。社会部の取材で行って来たのよ。そしたら凄いラブラブでさ。」
> 愛加は以上に興奮してその話しに興味を示し、あっという間に学校中がその話題で持ち切りになった。
「大した事無いでしょうがぁ。」
 愛梨がそう呟いて頬杖をつくと、廊下に森脇 朔也が立っていた。朔也は本署の刑事課の刑事で、愛梨の父親の後輩に当たる。少しだらしなくネクタイを締め、夜でもそのトレードマークになっている丸いサングラスは外さない。グレーの萬年スーツは相変わらずによれている。

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