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「何? 」
 愛梨が煩そうに言うと、朔也は黙って廊下を歩いていく。愛梨はため息をこぼした立ちあがり教室を出て行く。
 出て行った愛梨を成宮 惣二が見つめる。愛加の従兄で、愛梨と同じクラスで、愛梨の事に好意を持っている。その様子をあすみと愛加がほくそえんで見ていた。
「どうしたのよ、学校にまで。」
 渡り廊下に出てきた朔也について愛梨も渡り廊下に出る。チャイムがなり生徒が
帰って、廊下が静かになった。朔也はポケットから煙草を取り出し一本くわえて胸ポケットに入れていた手紙を愛梨に差し出し、愛梨が受け取ると、煙草に火をつけて、空に煙を噴き出す。
 愛梨は手紙を広げて眉をひそめる。その時は紛れも泣く父親からの手紙で、しかも「極秘」スタンプが押されたものだ。文面は以下の通りだ。
「ロイトーグ王国の大使館に至急迎え、一刻を争う事態也。」
 それだけの文面に「極秘」と朔也の登場、愛梨は渡り廊下の手摺り寄りかかり手紙を朔也に渡す。
「何よ、だから。」
「ロイトーグ王妃がお前に依頼だと。」
「警察は? 」
 半ばむっとしながら愛梨が言うと朔也は手を振って、手摺り背中を持たれさして空を仰ぐ。
「嫌なんだと。」
「警察に出来ないことを、私が出切る訳無いでしょうが。」
「しらねぇよ。迎えは来てる、行くか? 」
 朔也はフィルターすれすれで煙草を磨り潰し切ると、フィルターをゴミ箱に捨てた。
「強引だねぇ。」
 愛梨はそう言いながら朔也について階段を降りて行く。
 ロイトーグ王国。南国の海に浮かぶ小さな島国で、国土面積の小国ベストテンに入る国だ。十年ほど前に日本の援助によって、とある大国から独立した国だ。だから、日本には嫌というほど恩が在り、その国でしか取れないといわれる純度の高いルビーが日本に輸出されて来ている。

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