冬の来訪者

 FBIには特別な機関が存在している。ボディーガード専門の部署で、その対象の身代わりとなり、更にその人物をも警護する部署。囮捜査に関してはプロ集団だ。彼らは属にTSSと言われている。
 [トップ・シークレット・サービス]現在その部署に所属する人口は公表されていない。しかも、そのメンバー同士の面識はほとんど皆無で、普段は人目を避けるように普通のサラリーマンをしている風を装っている。仕事の呼び出しはいつも、電子による伝達のみ。
 それを生み出したのは、誰でもなく、愛梨の祖父である。
 朝の目茶苦茶早い時間だった。
 冬の朝はまだ暗く、凍てつくような寒い中、来訪者は彼の部屋の戸を開けた。
 足音が二日酔いの彼の頭に響く。
 いきなり布団をはがれ、彼は侵入者を仰ぎ見る。
 [レディ・レイ]だった。まっすぐで腰まで長い黒々とした髪。縁なしの眼鏡、化粧は薄く、いつもオレンジの口紅を塗っている。中国系で、目が細い。が警察官の中でも顔立ちが穏やかな方だ。
「何だよ。」
 彼は剥ぎ取られた布団を手繰り寄せ、頭まで被る。
「いつまで寝てんの。もう昼よ! 昼。」
 奇麗に通る高い声でレディ・レイは子供を叱るように彼に告げると、呆れながら荷物を椅子に置き、コ−トを脱ぎ、それをハンガ−にかけて部屋を見渡してからため息をこぼし、彼に背を向けて言う。
「昨日も飲み会? 」
「あぁ。医大の子……。」
「飽きないわね。」
 レディ・レイはそう言って、部屋に散乱している服を抓み上げる。
「で、何の用。」彼は布団から顔を出す。「どうせ、仕事だろうけど。」彼はそう言って起き上がる。
 彼は裸で居た。無駄の無い体に、左腕と胸を走る銃創が、彼が何者かを知る手立てだ。彼はベットの側に脱ぎ捨てたシャツを着る。

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