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「知ってるかしら、睦月帝国を。」
「あぁ、株に投資、マネ−ゲ−ムの上手な会社だろ。」
「そう。睦月 十蔵。一代ですべての金融業で成功し、以後その資産で国にまで金融をしている、この国にとってある意味、大蔵大臣とも言うべき人物。」
「で、その会社が何? 」
 彼は立ち上がり、台所と呼ぶには何もない場所へ行き蛇口をひねる。
 ステンレスにぶち当たる水を少し眺めコップをあてがう。彼には、出始め水―上水管途中で溜まっている水―は少し錆びを含んでいる気がするからだ。
レディ・レイは窓の側に脱ぎ捨てられた靴下を拾って彼のほうを向く。
「ボディ−ガ−ドよ。」
「映画か? ……。」
「馬鹿。」
 レディ・レイは少し頬をあかめて窓の外を向く。彼が知っている唯一のレディ・レイの興味ある事柄だ。一緒に観に行ったのは、始めて休みがあった日だったと思う。その日から、[合い鍵]を持ち合う仲になっている。
 彼の部屋からは高層マンションの壁しか見えない。空すら見えないその窓からは何の情報も入ってこない。
「睦月 悠里。十七才。正真正銘のお嬢さま。今度留学先から帰国されて都内の高校に編入するの。その子のガ−ドよ。」
「日本人? しかもガキかよ。」
「文句は言えないでしょ。あなたに仕事を選べる権利はない。そうでしょ? リューク。」
 彼[リューク]はまだ、「大体、この前は指示無視の挙句、被害者をかなり危険な目に遭わせたでしょ? それを二日、たった二日よ、謹慎にしてあげたのは、他でも無く私なのよ? 文句や、異存は無いはね? 」続けているレディ・レイに、空のコップを見せる。レディ・レイは首を振る。
「おっかねぇ女。」
 リュークは、ほくそ笑むレディ・レイに背中を向ける。

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