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 愛梨はそう言って男の手を離す。
「ついて来ても、何の得にもならないわよ。きっと。」
 そう言って愛梨は歩き出した。
 男は自分の掌を見つめた。たしかに年期の入った職人の掌をしている。
「俺はアンディー。この辺りには詳しいんだ。案内するぜ。」
 愛梨は男を見上げた。アンディーはそう言って手を差し出してきたが、愛梨はその手を打ち払い、歩き続ける。
「ちょっと待てよ。君みたいな女の子が行くとこじゃないよ。こっから先は。少なくても俺はそう思うね。」
 愛梨がアンディーを見上げる。分厚い掌で不精髭を撫でてアンディーは片目をつむった。
「どこへ行っても貴方のような輩は居るものよ。異国に安息の地なんて無いに等しいわ。それとも、貴方の国では、少女を護衛したがる風習がまだ残っているのかしら? 」
 愛梨がそう言うとあからさまにアンディーは反感を持った目で愛梨を見た。だがアンディーは反論せずに翻った。
「解ったよ。勝手にしな。向こうは、墓場と老人の家ばかりだ。面白いもんなんて何一つ無いぜ! 」
 アンディーは歩き出したが、どうしても気になって振り返る。愛梨は立ち止まり住所を確かめるようにプレートを見ていた。
「その家なら、あの青い屋根の家だ。」
 アンディーは紙を覗きこみ、三件隣の家を指差した。愛梨はアンディーを見上げてほくそえむとその家に向かった。
 中から出てきたのはロマンスグレーのお婆さんだった。腰が曲がってないのは、少々意外にも思えるほど歳を取っていた。
「お尋ねします。ブラック・ピースが入ったお宅でしょうか? 」
 お婆さんは愛梨を不審そうに見上げたが笑顔を見せて頷いた。
「絵を見せていただけませんか? 」
「貴方、どなた? 」

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