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 春奈は彬人と帰っていった。 
 嵐のようにやってきて、すっきりとして帰っていた春奈に、瑞貴は首を傾げていた。
「どうした?」
「何がなんだか。」
「彬人、結婚してたんだ。別れてもう三年かな? 理由は彬人の浮気。」
「嘘。」
「そんとき付き合ってたのが、須田。離婚してすぐ、奥さんが心労のために他界して、結婚二年でやっと出来ていた子供も死産。その所為で、あの二人の関係はおかしくなっていた。時々日本に帰ってきてた俺によく相談してたんだけど、時々じゃぁ、まったく役に立たなくて、そしたら、こういう結果になったわけだ。」
「ホテル、」
「お前なぁ、彬人と須田のこと話してんだぞ、俺とのことは、」
 瑞貴は黙っていた。駿はソファーに座り、それから落ちたように、瑞貴は床に座っていたから、駿からには背中を向けて座っていた。
「まだ、彬人のこと思ってんのかなって、かま掛けたんだよ。ホテルまで行って、服脱ぐから、参った。」
 瑞貴は俯いてしまった。それ以外のリアクションなど取れなかった。根ほり葉ほり聞くのは嫌だったが、聞きたくて仕方なかったのは事実だ。それこそ、下着は? どこまではしたの? まで。でもそれを聞くのは、まるで嫌らしい男が女性に強制する卑猥な言葉と同じだけの、卑屈さが感じられたのだ。
「別に、お前が気にすることじゃないだろ?」
 瑞貴はその言葉に激しく動揺する。そういわれて「何で? いけない?」と聞きかえせず。もし聞き返して、駿に「たかだか一回、二回キスしたぐらいじゃん。しかもキス。」と言われるのが怖かった。それ以外の言葉など、想像つくはず無かった。
「家、帰るか?」
 瑞貴は頷くだけだった。
 瑞貴と駿は瑞貴の家に向かっていた。
「以外に質素。」
 瑞貴は何も言わずに鍵を開けようとしたが、ドアはすっと押し開いていく。
「え、何で?」

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