セリーリャス

 秋風が心地よくなってきた頃だった。頬を滑る風は気持ちよく、そのまま寝入りそうな感じを受ける。土の匂いが鼻の側でしてる。身体がいやに楽なのに、動かない。
「お嬢様!」
 遠い場所で声がする。お嬢様? 誰のことだろう。足音がやたらと多い。鐘? 何の鐘だろう。どっかで聞いたことがあるけどな。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
 目が霞む。でも、なんだか、見えてきた。けど、……。
 目の前にいるのは白髪、白髭の老人。彫りが深くて、浅黒い肌。でも、でも、でも、
「あなた、誰?」
 そう、あなたは誰? ここはどこ? 
 痛い! 身体が、身体が潰されそう。身体が軋んで、身体が壊れそう。
「お嬢様!!」
 大騒ぎしている声が遠のいていく。

 真っ暗……。少し、寒い? 身体をそっと抱き締めてみるけど、それで暖かくなるわけでもない。真っ暗な、黒で塗りつぶされた中から、ぼんやりと光が見えてきた。
 赤。青。緑。黄色。凄く綺麗で、触れられそうなとこにある。宝石? かな? よく解らないけど、手を伸ばして、それを掴んでみようとする。
 あと、少しで、届く。あと、少しで。

NEXT→

Juvenile Stakes

Copyright (C) 2000-2002 Cafe CHERIE All Rights Reserved.

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送