セリーリャス
1
秋風が心地よくなってきた頃だった。頬を滑る風は気持ちよく、そのまま寝入りそうな感じを受ける。土の匂いが鼻の側でしてる。身体がいやに楽なのに、動かない。
「お嬢様!」
遠い場所で声がする。お嬢様? 誰のことだろう。足音がやたらと多い。鐘? 何の鐘だろう。どっかで聞いたことがあるけどな。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
目が霞む。でも、なんだか、見えてきた。けど、……。
目の前にいるのは白髪、白髭の老人。彫りが深くて、浅黒い肌。でも、でも、でも、
「あなた、誰?」
そう、あなたは誰? ここはどこ?
痛い! 身体が、身体が潰されそう。身体が軋んで、身体が壊れそう。
「お嬢様!!」
大騒ぎしている声が遠のいていく。
真っ暗……。少し、寒い? 身体をそっと抱き締めてみるけど、それで暖かくなるわけでもない。真っ暗な、黒で塗りつぶされた中から、ぼんやりと光が見えてきた。
赤。青。緑。黄色。凄く綺麗で、触れられそうなとこにある。宝石? かな? よく解らないけど、手を伸ばして、それを掴んでみようとする。
あと、少しで、届く。あと、少しで。
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