霜除け祭

 エラードは小さく息を吐いた。家中の者が起きだし、街も起き始めていた。だが、興奮しきっている頭は休むことを嫌い、窓の側にずっと彼を佇ませていた。
 その彼の腕をそっと触られて、初めて彼は目の前の人物の存在を知る。
「セリーリャス。」
「どこか具合悪いの? 顔色悪いわ。そうよね、私がベットを借りていたから。」
 寝間着からヒラソルが持ってきた服に着替えたセリーリャスが不安そうに見上げていたのだ。気付けばレノの姿はない。
「ヒラソルは?」
「椅子で寝てる。昨日ずっと起きていたから、もう少し寝かせて上げようと思って。それよりも、ごめんなさいね。眠いよね。今日のお仕事に差し支えるでしょ?」
 エラードはそう言ったセリーリャスから顔を背ける。
「私は、」
 首を傾げるセリーリャスと同時に、執事が朝食の用意が出来ました。と部屋に入ってきた。
「ご一緒にどうぞ。」
 エラードの言葉にセリーリャスは頷き、ヒラソルを起こしに向かった。
 何を言おうとした? エラードはため息を付いて食堂に向かった。

 セリーリャスが馬車で帰ると、屋敷の前に大勢の使用人達が並んでいた。居間では男性の小間使いもいる、そんな大人数が馬車を取り囲む。
「あの、」
 セリーリャスが口を開いた瞬間、料理番のトシノなどはたいそう心配したらしく泣き出し、侍女達は寝ずの番ですっかり化粧が剥がれ、男達は草むらやらを捜索したのか、傷だらけの体を抱き合っている。
「もう! 本当に心配したんですよ。」
 暖かい言葉がセリーリャスに流れる。その言葉の裏など無い。そのままの感動。セリーリャスはふいに倒れ込む。腰が抜けたような感触が身体を襲ったあと、涙が止まらないほど流れた。
 みんなが居る。誰も怖がってなど無い。みんな私を愛してくれている。その幸福感が涙となって出ているのだ。
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Juvenile Stakes

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