戦士の誇り

 セリーリャスは眉をひそめていた。レノの話しによれば、サラードとはかなり遠い異国で、ただ、白亜の家々が立ち並ぶ美しい場所だとは聞いているが、なにぶん、行くのにひと月も有するという。そんな場所に行こうと誘いに来たのだ、その美眉も歪むと言うものだ。
「サラードに、ですか?」
「ええ、私たちは帰ります。まぁ、あなたの後釜を捜す旅でもありますけどね。私をふくめた三人は通常の西ルートを行き、他の三人が東側ルートで行き、サラードで落ち合う算段です。そう、グラナダとサラードはほぼ真反対に位置しますからね、数日のズレがあっても一ヶ月ほどで落ち合うことになっているのです。」
「門は? 門はこの国にあるらしいのでしょ?」
「ええ、そうですが、そのためにもやはり力の補給が入ります。どういうわけだか、魔族は冬にあまり活動しませんからね。それはこの百年続いていることです。ですから、ここから半球の土地へ巡回の旅に出れるのです。それに、この旅は何も今年始まったわけではないのです。毎年、それこそ先々代の聖戦士からですし、それ以前も決まってはいませんでしたが、そうでしたから。」
「でも、一ヶ月も、」
「エラードは行きますよ。」
 セリーリャスはそう言ったカルドを見た。心内を読まれている。セリーリャスがエラードに興味を持っていることを知っているような、そんな顔をしている。
「あなたさえよければ、一緒に行きませんか? エラードも、旅を楽しく過ごせるはずです。」
 セリーリャスはとりあえず返事を保留した。
 カルドは馬車の中でほくそ笑んでいた。
「記憶喪失というものは、人を素直にさえしてくれるんだね。」
 カルドはそう言って手を組み目を閉じた。
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Juvenile Stakes

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