le Souhait




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 湊と彬人は学校を早退し、湊の家にいた。
 彬人は勝手知ったる湊の家を自由に動いて、冷蔵庫を開け、牛乳をコップに注いでテレビ前に陣取った。
 湊が二階から降りてきた。すっかりパジャマを着て、そのまま薬箱を明け、体温計と薬を机に用意して、水を入れにいく。
「マジで、風邪?」
「だっつってるでしょ?」
「引くもんだねぇ。」
 湊は水を口に含み、粉薬を口に入れ飲み込む。
「殴られたい?」
 彬人は笑ってテレビを見る。そこに映し出されたのは、砂漠の映像だった。ただただ暑すぎる陽炎だったその映像に、二人は顔を見合わせ、舌を出す。
「暑い。」
「なんだかなぁ。」
 彬人はそう言ってチャンネルを変えたが、映像は一向に変わらない。
「何してんのよ。」
「何って、かわんねぇんだよ、壊れてんのか?」
「まさか。あれ? 本当だ。おかしいなぁ。もう消しちゃえ。」
 ぷつん。と消える画面。真っ黒い画面に二人の姿が映る。その後ろ、台所の辺りに白いドレスの女が立っているように見えた。二人は同時に振り返ったが誰も居ない。
「やだぁ。」
 湊が顔をしかめ彬人の前に座る。
「なんだよ。」
 湊は彬人の手を握り、辺りを見る。
「だめなのよ。怪奇もの。」
「は?」
「だから、お化けとか、だめなの。おまけに、今日は両親も、兄貴も居ないのよ。」
「だから?」
「一緒に居て。」
「やだ。」
「何で? か弱い女の子一人怖がってんのよ!」
「か弱いねぇ。どこのどいつがそんな不届きなこと言うんだか。」
 湊はむっとして彬人を睨む。この性格の悪いやつがモテル理由はやはり顔だけだ。と言う顔をした湊に、彬人はため息をつきながら泊まることを承知した。
「だいたい、この一週間おかしかったのよ。だから、今日、兄貴も居なくなるって聞いて大反対したのに、三人とも薄情すぎるわ。」
「いい年して一人で留守番できないわけないと思ったからだろ?」
「留守番はできるわよ。自分の家だもの。でも言ったでしょ、この一週間おかしいんだって、今日みたいにテレビがおかしいとかじゃなかったけど、シャワーの水が急に出なったと思ったら、砂が出てきたり。」
「砂?」
「そう。配管おかしいんじゃないの? って思ったけど、お母さん呼んだらなおって、体についていた砂も綺麗さっぱりね。血とかじゃないけど、でもなんかやじゃない。」
 砂が出てくるだけで嫌だ。と思うのに、血と比べる湊の思考回路に彬人は顔をしかめる。
「それに、寒かった日、あの日窓閉めて寝てたのに、急に熱い風が吹いてきたし。」
「お前、どっか行くのか?」
「何よそれ。」
「別世界とつながってるって感じしないのか?」
「別世界……、あの世?」
 彬人は呆れながら風呂へと向かった。
「なんか、変なこといったか?」

 湊は自室のベットにもぐった。寝る時間にしては平均時間より五時間ほど早いが、体のだるさと、やはり風邪らしい熱の所為で早めにベットに入ったのだ。
「大丈夫か?」
 十一時を回ったころ、コンビニ袋を下げた彬人が部屋に入ってきた。
「何とかね。まだ十一時? 汗かいたなぁ。」
「着替えて、これ食って寝とけ。」
「お、おごりだね?」
「貸し。」
「病気の私から金取るのか!!」
 彬人は手を振りながら部屋を出て行った。
 湊はパジャマを着替え、彬人が買ってきてくれた棒アイスを加えたまま、着替えたパジャマを持って下に下りた。
「あ?」
 彬人の声に居間に顔を出すと、毛布をかけてソファーに寝転んでいた彬人がテレビのリモコンを必死に押している。画面はまた、砂漠だ。
「壊れてるって言ったじゃない。」
「映ってたんだよ、お前が降りてくるまで。」
 湊は顔をしかめ、なぜ砂漠しか映らないのか考えようとしたが、気分の悪さにそのまま二階へと上がる。すると画面は砂漠から普通の番組に変わった。
 彬人は天井を見上げ、焦燥感に襲われてすぐ二階へと走った。

 ごつん。湊は頭を打って目を開けた。ベットに寝て、毛布を手繰っていたはずなのに、掴んだのは他人の服。寝ている場所は、ほこった木の上。
「え? 何、どこ? ここ……。」

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